こらない

2005-03-23 (水)

本『東京の下層社会 / 紀田順一郎』

『東京の下層社会 / 紀田順一郎』(ちくま学芸文庫)読了。
明治以後の東京のスラム等の下層社会についてまとめたもの。

前半は、今や見る影もない都内のあそことかそことかの一大スラム、貧民窟の当時の現状が主。
無灯火が常識のそこでは暗く狭い部屋で折り重なって雑魚寝するわけで、「親子が夫婦になったり兄弟が夫婦になったり」。

ページをめくるたびに壮絶な描写が飛び出すのだけど、そのひとつが残飯屋。
“残飯屋と呼ばれる人”でなく、残飯屋という商い。

あるいは子売り/子殺しの話もまた凄惨。

後半は娼婦、そして女工の話。
借金のかたとして売られた女性、春を売り返済が終われば自由の身になるはずだけど、徹底して搾取され、実のところ借金は増えていくシステム。
そしてそれよりも酷い紡績女工の生活。

ほんの数十年前の悲惨、すなわち生活の手段を失った女性に、女工か女郎か、要するに身売り以外の方策が残されていなかったという状況は、いまや全くの他人事になってしまっているようだ。
いかに女性の職種が限定されていたか、「女工か女郎か」といわれた背景も、あるいは逆に「事務員」や「バスガール」といった職種がいかに新鮮な響きをもって女性を惹きつけたかということもよくわかるであろう。

女郎にしろ女工にしろ、基本的に人間として扱われず「壊れたら捨てて補充する」。
その補充をするために全国をまわる人買いたち。
水呑百姓、口減らし、間引き。

この本を読んでる間、映画『あしがらさん』と丸尾末広氏の漫画が映像として何度も頭に浮かびました。

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