こらない

2004-10-04(月)

『心理療法個人授業 / 南伸坊, 河合隼雄』

文庫『心理療法個人授業 / 南伸坊, 河合隼雄』読了。

以前、コル:文庫『心理療法個人授業 / 南伸坊, 河合隼雄』で紹介した、南伸坊氏が生徒となって各界の達人に個人授業を受けに行くシリーズの1冊。

本当のところをいうと、アタシはこの南伸坊さんの文体(?)には馴染めないのだけど、このシリーズに関してはその中身に惹かれてスイっと読んでしまう。

生徒である南さんが「なんで?なんで?」といった感じで子どものような質問をぶつける、というのが特徴なのだけど、過去のシリーズで「へえ」だったのが、「そこのところはまだ分かってないのです」という答えが多いということ。
そして、今回のこの「心理療法」においては、そもそも人の心なんて分からないというのが出発点になっていたりする。

南さんは脳なんかに興味があったりして、うつ病等の心の病だっても、結局は脳内物質のなんらかの異常である、だからそれにあった薬で制御することもできるのだ、といった方向の知識を得ている。
それもブツけつつ、その先、あるいはその手前である、心を扱う心理療法の話を聞く。

心理学は科学なのか?という議論があるらしい。
なるほど、物理学的な、なんていうか、同じ条件を揃えたら同じ結果が得られるか、みたい部分では臨床心理学は科学とは言いにくいのかも知れない。
でも物理学も、不確実性とか複雑系とか、物理学だけでは解明できないといったことになってるんですっけ、と南氏。
「あら、そうだったのか」と思ったのが、河合氏が京都大学の数学科を出ているということ。
もともと科学一辺倒で、心理療法を始めてからも「これは科学か?」という視点を念頭において、だったらしい。

フロイトがいて、アドラーがいてユングがいて、のあたりの話も、他で見る簡単な流れとはまた違う感じの「歴史」が分かりやすく語られていて面白かった。

あと、学生の頃(アタシは心理学科出身、といっても実験心理)いまいちよく理解していなかった転移(患者が先生を好きになってしまう)と逆転移(その逆)の話も、もう少し理解に近づけた。

そして。
「今から自殺する」というクライアントに対して、どう接するのか、というシビアな話題。
自殺を持ち出さなくても、二者択一を迫られ、そのどちらを答えても不正解、というケースは多々ある。
そんな時どうするか。
いや、どうするか、という問いにも答えがあるわけではない。
「なるほど、そうやって対処すればいいのね」なんていう都合のいい回答が、この本で紹介されているわけでは、ない。

話題はその後、ロールシャッハや箱庭、そして「物語」へ。
「物語」というのは、ちょっと引用すると、

<blockquote>「そもそも心理療法というのは、来談された人が自分にふさわしい物語をつくりあげていくのを援助する仕事だ、という言い方も可能なように思えてくる」</blockquote>

というような形で出てくる、その「物語」。
これはアタシもずっと思ってきたことだったので、すとんと腑に落ちて、なるほど、だった。

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