こらない

2006-07-24(月)

2006-07-16: 維新派『ナツノトビラ』

維新派『ナツノトビラ』@梅田芸術劇場メインホールにイッテキマシタ(2006-07-16 昼)。

昨年、メキシコで初演だった『ナツノトビラ』。
それを追っかけて、メキシコのグアナファトまで行ってきたアタシにとっては、2回目となる観劇。

パッと見た感じは同じなのだけど、開演してみると、違う(メキシコ公演と)。
いきなり舞台セットのあちこちが動き出してびっくり。
メキシコでも、大きくは動いていたと記憶するのだけど、こんな風な動的な舞台ではなかった。

維新派といえば、公演の度に野外に建立される大規模の劇場。
劇場の周りには屋台村が併設され、ひとつのお祭りとなる。
公演自体はそのお祭りの中のひとつ、といった印象もあって、近年はそのお祭りが奈良で開催されたり、ほとんど無人島のような場所で開催されたり。
遠方から赴く者にとっては、その旅の出発の時点から、すでに維新派の公演が始まっているのだ、みたいなことを以前書いた。
そして、公演の最中に「フ」と風が吹き、この風が吹いてこそ、維新派だ、と。

なので、東京の新国立劇場での屋内公演『nocturne』は不満だった。
いくら、前例を見ないほど舞台セットを動かしても、そこに風は吹かなかったから。

けど。
今回のを見て、分かった。
維新派は、もうすでに次へ行っている。

そうか、そうだったか。

王國三部作の最後の『流星』(2000年)。
モノクロームで無機質な舞台セットで行なわれた、それまでと比べて異質なステージ。

翌2001年、奈良室生寺での運動場全体を「舞台」とした『さかしま』では、その広い「舞台」を走り回るため「体力作り」に重点が置かれ、同時に「身体づくり」が行なわれた。
(あと、きっとその広い平面での、人の配置というか、きっとそういうことも)

2002年、犬島での『カンカラ』も、アタシの中ではなんとなくモノクロームな印象がある。
というより、後半の神様がたくさん出てきての宴会シーンが、(盛り上がるシーンなのでうれしくはありながらも)ちょっと浮いていたような記憶がある。

そして2003年の新国立劇場での『nocturne』。

2004年、久しぶりの南港での『キートン』もやはりモノトーンで…。

いや、別にモノトーンだった、ということが言いたいのではなく、その、役者の動きのことを言いたいのだけど、アタシにそういうボキャブラリーがない。
うー。

『流星』『さかしま』あたりで、「ダンス公演っぽい」と思ったのだ。
でも、例えば維新派をダンスカンパニーと呼ぶとしたら、とすると、まだ甘い、中途半端だ、と思った。
けど、この『ナツノトビラ』で、ダンスカンパニーと呼んでも差し支えないんじゃないか、と。
維新派がダンスカンパニーになった、ってことじゃなくて、維新派の公演は、ダンスカンパニーのそれにひけをとらない、と言えるんじゃないか、と。

あー、そんなこと言っても、アタシは他のダンスカンパニーの公演に通じてるわけじゃないので、「なんかそんなようなことを思った」ってだけなのだけど。

アタシにとっての維新派の魅力は、「新しいものを見せてくれる」ということ。

最初に見た汐留貨物跡地での『少年街』(1991年)から続いた、「名詞の羅列」「大阪弁ケチャ」と呼ばれた維新派ラップの音楽ライブっぽい舞台。

その後の『青空』(1994年)や『ЯOMANCE』(1996年)での、台詞もストーリーもある映画のような世界。

さらにそのあとの、祝祭的な世界。

毎回、「これが維新派だ」「これこそ維新派だ」と思っていたものが、次々に変化していく。
それが面白い。
だから面白い。

今回、公演後に、維新派主宰の松本さんによるトークショー(司会もなしで30分)があった。
「30分ももたんわ、誰か質問してや」ってな感じで、客席からの発言を募ったのだけど、そこでは次々に「シンプル過ぎる」「眠たい」という“ダメ出し”が飛び出し、その度に松本さんが「仰る通りです」と頭を下げていた。

実際、アタシも眠かった。
こんなに眠気と戦いながら見た舞台も、久しぶり。

そして、多くの人が言っていたように、アンコールで飛び出した「路地の蒸気機関車」(from 『少年街』)では、やっぱりアタシもものすごくワクワクした。

けど、「あーゆーの(「路地の蒸気機関車」みたいな派手なやつ)をもっとやったらええねん!」というのは、そりゃやっぱり違う。

そいえば、もっと分かりやすいところに変化が見えていたのだった。
維新派のキャッチフレーズといえば「(各自調べること)」だったのだけど、最近は「喋らない台詞、踊らない踊り、歌わない音楽」というものになってる。
実は、このコンセプトが、いまいちピンと来てなかったのだけど、こうしてまとめてみて、なるほど、と。

<h4>追記</h4>

同じようなことが、中西理の大阪日記に、もっときちんとした言葉で、書かれていました。

あと、維新派の過去の公演については、少年王者舘ノ函 - 公演記録に、少年王者舘の公演記録と一緒にまとめてあって、上記を書く際に役立ちました。
ありがとう、自分。

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