こらない

2005-08-01 (月)

2005-07-31: 方法マシン特別仕様 「またりさま全公案連続演奏会」

方法マシン特別仕様 「またりさま全公案連続演奏会」@門仲天井ホールにイッテキマシタ(2005-07-31)。

「またりさま」の存在を知ったのは結構前で、確かヒジリさんのところの掲示板で知った。
その時に見たのがおまたりさんというページ。
曰く。

人々から「おまたりさん」として親しまれている「またりさま」は古くから秘境として知られるマタリの谷に伝えられた伝統芸能の名である。収穫祭の終わりに村の未婚男女が集まり奉納されるこの「またりさま」は、若者達が互いの背中だけを見た状態のまま翌日の明け方まで続けられ、毎年静かで不思議な祭りのクライマックスとなる。
輪になるよう列をなして並んだ男女達は邪気払いの鈴と木片を両手に持ち、村に伝わる「鈴カケ」というしきたりに従い、長時間にわたる緊張状態の中でひたすら「演奏」を続ける。決して間違えが許されない厳格に定められた規則によって行われるゲームのようなこの儀式こそは、その厳格さゆえに、村の若者達の団結と心の交流を促す沈黙の祭儀なのである。

文中にあるように、「演奏者」は銭湯で輪になってタオルで背中をこする時のように(そんなことしたことないけど)、輪になる。
で、右手に鈴、左手にカスタネットを持って、前の人の肩を叩く。
叩かれた人は、ルールに従って、さらに自分の前の人の肩を鈴なりカスタネットなりで叩く。
これが延々続くのだけど、鈴を0、カスタネットを1とすれば、1ビットで表現できるため、2進法計算が可能になり…云々、というのが今回の公演。
つまり、初期状態によって、いくつかの「演奏パターン」「ループ」が出現する。

いつか見たいなーと思っていたところに今回の公演を知った。
曰く。

数学的に解明された「またりさま」の全演奏パターン(公案)を一挙連続演奏(演奏時間最短10分)。
究極の超高速人力アルゴリズム体験をあなたに!

「超高速」って書いてある。
これは楽しみ。
もしかすると、ちょっとしたトランス状態が生まれるかも知れない。

そんなわけで会場に赴いたのだけど、まず第一の勘違い。
この「またりさま」、「あり得たかも知れない伝統芸能」だった。
鼻行類だった。
ハイアイアイ諸島だった。
平行植物だった。
そうだったんかー。
ちゃんと解説を読んでませんでした。

じゃあなんなの?というと、現代音楽の作曲などをしているという三輪眞弘氏という方の「作品」らしい。
え? 現代音楽? アート? なに?

以下は、どうやら「あらゆるイベントに演劇性を求める」という傾向を持つアタシの感想。

まずがっかりだったのが、アタシが想像した「超高速」には遠く及ばなかったこと。
毎日毎日れんしうしたとのことなので、こんなこというのはプレイヤーに失礼なのだけど、ちっとも速くない。
「イチ、ニ、サン、シ…」って頭で拍がとれるくらいのスピードだった。

そして、失敗するわけです。
それはいい。
失敗はあった方がいい。
けど、失敗した時に失敗した人が「ごめんなさい、もう一度お願いします」とか言うのよ。
「あり得たかも知れない伝統芸能」で、しかもスタートの時に「またぁ〜りぃ〜」とか言うなら、失敗した時の掛け声も決めておいて欲しい。
詰めが甘すぎる。

同じ理由で、ステージがむき出しの平台なのもいただけない。
詰めが甘い。

「最速で10分」なのだけど、何回か失敗があり、失敗があると最初からやり直しなため、結局演奏時間は30分ほど。
その後は、アフタートーク。
このアフタートークに中沢新一氏が列席していて、氏の発言がいちいち面白かった。
「日本の収穫の祭りみたいなものはつい最近始まったもので、こういった(またりさまのような)ものは、もっと昔にあったでしょうね。きっと洞窟の中で行なわれていたでしょう」
そして「場」「場所」の話になり、「今回、ここで公演を行なうというのは少し疑問」といったことを言っていて、それは半分冗談だと思うのだけど、やっぱりそういう意味で「詰めが甘い」。
いや、今回の場合、場所まで凝るのは酷かも知れないけど、だからこそ、装置にはもう少し気を遣って欲しかったなあ。

先に書いた「演劇性」というのはそういう意味で、アタシ、金払ってみるからには、ちゃんと演出して欲しいの。
アイデアを見せるだけなら、3分でいいもの。
それ以上の時間を拘束して人に何かを見てもらうなら、ちゃんと人を楽しませることを考えないといけないと思う。
いや、「いけないと思う」というか、そこをちゃんと練って考えられているものがアタシは好き。

で、またりさまだけど、これは面白いと思ったの。
アイデアだけのことじゃなくて、演奏自体がちゃんと音楽になってて、それがちゃんと面白い。
だから、うだうだと能書きなんて要らないのに、アフタートークでうにゃうにゃ解説するのは蛇足。
一気に覚めちゃった。
現代音楽の分野って、こんなのが最先端なの?
アタシは現代音楽のことをまったく知らないんだけど、数式や物理学の理論を当てはめて作曲するなんて、さんざんやり尽くされたことじゃないんだろうか。
それをわざわざ人力で実現することが新しいんだろうか?
だとしたら、他の世界を知らなさすぎるよなー。

10年ほど前に、とある人が「前衛舞踏だとかコンテンポラリーダンスだとか言ってる連中は、石丸だいこの踊りを見ろっつんだ!」と言ったんだけど、それと同じようなことを思ったりしました。

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