こらない

2009-02-03(火)

iPhotoで顔認識した後の世界のショートショート

こらない - iPhoto '09使用開始にて、iPhoto '09の新機能である顔認識と、それからFlickrとの連携について書いた。

そんなわけで、顔認識機能を使って、アタシのMac上でいろんな"顔"に名前をつけたわけだけど。
以下の話では、プライバシーとかそういうことは一切置いておくとして。

アタシがつけた“顔“と名前の情報が、ネット経由で例えばアップルに集積される、と(実際にはされないです現在は)。
他のiPhotoユーザも、それぞれのMacで“顔”に名前をつけ、その情報もアップルに集積される、と。

すると、アタシが撮影した渋谷スクランブル交差点の写真に写ってる多数の知らない“顔”のいくつかに、自動的に名前を表示する、ということが可能に。
例えば国民全員がiPhotoを使って、自分の顔に名前をつけているとすれば、全員の名前が判明することに。
そゆことって、技術的にはすでに可能と。

国民全員は極端の話としても、例えばmixiのようなものと連携して、「友人の友人までには、自分の顔データと名前データを公開」とか設定しておくと、友人の友人のところにある写真にたまたま映り込んでるアタシの顔に、自動でアタシの名前が表示されると。

などと妄想してたら、すでにありました。

Facebook(というネットサービス)って、そういう機能を持ってるみたい。
以下に書いてあった。
「iLife '09」と「iWork '09」の新機能を体験 - 速報 ニュース:@nifty

こうやって顔認識を行った写真をソーシャルネットワークサービスのfacebookに投稿すると、きちんと名前情報も一緒に転送されます(facebookには、写真に写っている知り合いを枠で囲って名前情報を追加する機能がある)。iPhoto '09で、facebook投稿のボタンをクリックすると、写真を適切なサイズに変更してfacebookに投稿し、写真に写っている友達に対して通知を送ってくれます。例えば、ここでは写真にクリスが写っていたので、彼に通知が届きます。

ちなみに、今facebookに投稿した写真ですが、クリスのとなりに写っている女性が誰か私は分かりません。しかしここで、投稿後にクリスがfacebookで写真を見て、となりの女性にゾーイという名前でタグ付けしてくれたとしましょう。すると、私のiPhoto上で「facebookと同期」ボタンをクリックすれば、それまでなかったゾーイの名前が表示され、彼女の写真の一覧が表示されるようになります。

「写真の中の顔の位置とその名前」をfacebookとiPhotoでやり取りできるみたい。
ということは、そういう情報を記述するやり方がある、ということ。
そういうのがオープンになれば(すでにあるのかも知れないけど知らない)、他のサービスともやり取りできるようになる(すでに出来るのかも知れない)。
わー。

で、またGoogleがそういうデータを「デフォルトで公開」とかにしちゃって、ものすごい規模でいろんな人の「顔と名前」が公開さちゃって大騒ぎ。
というか、Googleの写真管理サービスPicassaって、顔認識可能だったよな。
アメリカなんかだと、顔も実名もネット上にさらしてることが多い印象なので、「顔と名前」のデータが「デフォルトで公開」なのは、いかにもありそう。

さて。

今回触れてないけど、すでに写真にはGPSから取得した位置データを埋め込むことができるようになってる。
撮影日時も記録されてるから、「誰がいつどこに行ったか」を、Googleのような会社がどんどん集積可能。

「こんにちは、はじめまして」
「はじめまして」
相手の顔をiPhoneで撮影。
撮影された初対面の相手の顔写真データは、すぐさまGoogleに送られる。
データを受信したGoogleでは、すぐさまそれが“誰であるか”を特定し、その人の情報をすべてかき集める。
さらに、そうしてかき集めた“初対面の人のさまざまデータ”と、自分のデータを比較して、共通項を割り出し、iPhoneへ送信。
「(iPhoneに表示された情報を見て)山田さん、と仰るのですね。あ、名古屋出身なんですか、僕も名古屋なんです。XX高校っていうと、△△さんの出身校ですよね、ええ昔からファンで。ああご近所なんですか。あら、4年前にメキシコに行ってきたんですか。いや僕もその頃ちょうどメキシコに。あの噴水のところにあった屋台のタコス食べました? あれおいしかったですよねー。やー、どこかですれ違ってたかも知れませんねー」
…ってこれ、星新一のショートショートにあった話と、まるっきり同じ。
インフラ的にも技術的にも、この話はすでに可能だ。

本当にこういうサービスが現実的に使われるようになると、当然「人と知り合うというのはそんな“ピッ”とかやってデータを照合するようなことではなくて、こう、あれこれ話していくうちに少しずつ絆が生まれてくるもので…」という意見が出て、でもそうこうするうちに、生まれた時からこういうサービスが存在する世代が大人になってきて。
昔の人って、初対面の人とどう接してたの? って。
だって、名前もニックネームも分かんないから呼びかけることもできないし、会話しようにも話題が見つからないでしょう? って。

そうな風になると、すでに更正した犯罪者とか、二度と一般社会には戻れなさそうだ。

というわけで、新作のショートショートはこんなで。

十数年ぶりに娑婆に戻った男。
時代がすっかり変わり上記のような社会になっていて、初対面だろうとなんだろうと過去の犯歴が即座に伝わり生活がままならない。
“情報網”から逃げ出した男は、やがて自分のような過去を持つ者が集まるバーへ。
「こんなところへ流れついたってことは、お前もあれか?」
近付いてきた男は、主人公の顔にカメラを向け、
「(ピッ)お、網走に入ってたのかい。看守の××さん、まだ元気だったか?」

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